Reactでステートの値が反映されない時に試すこととその理由
ReactでコールバックとかuseEffectをごちゃごちゃ書いていると、時々ステートの値が上手く更新されていなくて困ることがあります。
たとえば、以下のようなコードを書いているときとか。
export default () => { const [count, setCount] = useState(0); const onClick = () => { setCount(count + 1); // カウントを1増やした console.log(count); // 1増えた値が表示されてほしい(でも増える前の値が出る) }; return ( <button onClick={onClick}>{count}</button> ); };
useEffectの場合も同じような感じで、セットした直後に取得しようとしても値は更新されていません。
const [double, setDouble] = useState(0); useEffect(() => { setDouble(count * 2); // countが更新されたら、doubleには常に2倍の値を入れる。 console.log(double); // 上の行で計算した数字を表示したい(でも実際は更新する前の値が出る) }, [count]);
ポイントは、「値をセットした処理と同じ流れで値を取得しようとしている」というところにあります。(もっと厳密な解説は下の方に書いてあります)
対処方法
以下のようにしてuseEffectを使ってやると「値をセットした処理」とは別になるので、更新後の値を取得出来るようになります。 (あんまり厳密な表現じゃないけど、イメージとして)
// ボタンがクリックされたら呼ばれる部分 const onClick = () => { setCount(count + 1); // カウントを1増やした }; // countが更新されたら呼ばれる部分 useEffect(() => { console.log(count); // これなら1増えた値が表示される }, [count]);
useEffectを使った例の場合は、以下のようにuseEffectをチェーンしてあげれば取得出来ます。
// countが更新されたら呼ばれる部分 useEffect(() => { setDouble(count * 2); }, [count]); // countが更新されたら呼ばれる部分 useEffect(() => { console.log(double); // これならちゃんと最新のcount*2の値が表示される }, [double]);
そもそも何故こんなことになるのか
ReactのuseStateでステートを使っているとついついクラスのメンバを触っているような感覚になるのですが、実際は結構不思議な動きをしています。 わりと複雑なので、順を追って解剖してみましょう。
functional componentはめっちゃ呼ばれまくる
試しに以下のコンポーネントを実行してみてください。
export default () => { console.log('関数が呼ばれた'); const [count, setCount] = useState(0); const onClick = () => { console.log('クリックされた'); setCount(count + 1); }; return ( <button onClick={onClick}>{count}</button> ); }
クリックを数えるだけのボタンです。
これを実行してみると、クリックする度に「クリックされた」だけでなく「関数が呼ばれた」も表示されることがお分かり頂けるかと思います。
クリック時の「関数が呼ばれた」ですが、setCount(count + 1)
の行をコメントアウトすると表示されなくなります。
この挙動は、ステートが1つでも更新されると関数全体がもう一回呼び出されるというルールによるものです。
useStateするまで値は変わらない
さきほどの関数のconsole.log
を増やして、以下のようにしてみました。
export default () => { console.log('関数が呼ばれた'); const [count, setCount] = useState(0); console.log(`useStateを呼んだ(count=${count})`); const onClick = () => { console.log(`クリックされた(count=${count})`); setCount(count + 1); console.log(`値をセットした(count=${count})`); }; return ( <button onClick={onClick}>{count}</button> ); }
これで実行すると、大体以下のような挙動になります。 (若干見やすくしてます)
関数が呼ばれた useStateを呼んだ(count=0) クリックされた(count=0) 値をセットした(count=0) 関数が呼ばれた useStateを呼んだ(count=1)
この結果から、count
の値が更新されるのはステートの更新によって関数が呼び出された後ということが分かります。
厳密に言うと、ステートをセットしたあとuseState
をもう一度呼ぶまではcount
の値は変わらない、ということになります。
useEffectが呼ばれるタイミングは結構遅い
では、対処方法として使ったuseEffectが呼ばれるタイミングを調べてみましょう。
export default () => { console.log(`関数が呼ばれた`); const [count, setCount] = useState(0); console.log(`useStateを呼んだ(count=${count})`); const onClick = () => { console.log(`クリックされた(count=${count})`); setCount(count + 1); console.log(`値をセットした(count=${count})`); }; useEffect(() => { console.log(`useEffectが呼ばれた(count=${count})`); }, [count]); return ( <button onClick={onClick}>{count}</button> ); };
だいぶ長くなってまいりましたが、増えたのはuseEffectの部分だけです。
実行すると、以下のようなログが出ます。
関数が呼ばれた useStateを呼んだ(count=0) useEffectが呼ばれた(count=0) クリックされた(count=0) 値をセットした(count=0) 関数が呼ばれた useStateを呼んだ(count=1) useEffectが呼ばれた(count=1)
直感的なイメージよりもだいぶ遅いタイミングで呼ばれています。 useEffectに渡した関数が呼ばれるタイミングは、常にコンポーネントが(再)レンダリングされた後(つまりコンポーネントが実行されなおした後)になるようです。
このタイミングのおかげで、useStateを呼び直してからuseEffectの中身が呼ばれることになります。 結果として、useEffectの中であればセットされた新しいステートを取得出来るということになります。
useEffectをチェーンするとfunctional componentはさらにめっちゃ呼ばれまくる
あとはご想像付くと思いますが、対処方法で使ったuseEffectを繋げていく書き方の場合の挙動も見てみましょう。
export default () => { console.log(`関数が呼ばれた`); const [count, setCount] = useState(0); const [double, setDouble] = useState(0); console.log(`useStateを呼んだ(count=${count}, double=${double})`); const onClick = () => { console.log(`クリックされた(count=${count}, double=${double})`); setCount(count + 1); console.log(`値をセットした(count=${count}, double=${double})`); }; useEffect(() => { console.log(`useEffect(count)が呼ばれた(count=${count}, double=${double})`); setDouble(count * 2); }, [count]); useEffect(() => { console.log(`useEffect(double)が呼ばれた(count=${count}, double=${double})`); }, [double]); return ( <button onClick={onClick}>{count}</button> ); };
ログは以下のようになりました。
関数が呼ばれた useStateを呼んだ(count=0, double=0) useEffect(count)が呼ばれた(count=0, double=0) useEffect(double)が呼ばれた(count=0, double=0) クリックされた(count=0, double=0) 値をセットした(count=0, double=0) 関数が呼ばれた useStateを呼んだ(count=1, double=0) useEffect(count)が呼ばれた(count=1, double=0) 関数が呼ばれた useStateを呼んだ(count=1, double=2) useEffect(double)が呼ばれた(count=1, double=2)
この流れを文章で書いてみると、以下のような感じでしょうか。
setCount
が呼ばれたことによってステートが更新されて- ステートが更新されたので関数コンポーネントがもう一回実行されて
- 関数コンポーネントを実行してみたら
count
が更新されていることを検知して count
が更新されてたのでuseEffect(count)が実行されて- useEffect(count)の中で
setDouble
が呼ばれたことによってステートが更新されて - ステートが更新されたので関数コンポーネントがもう一回実行されて
- 関数コンポーネントを実行してみたら今度は
double
が更新されていることを検知した double
が更新されてたのでuseEffect(double)が実行される
うーん、長い。
まとめ
基本的には、以下2点を抑えておけば良いのではないかと思います。
- 関数コンポーネントのステートはすぐ更新されるわけではない(次に関数コンポーネントが実行されなおすまでは更新されない)
- useEffectが実行されるのは、次に関数コンポーネントが実行されたタイミングまで遅延する(ここまで待てばステートも更新されてる)
Reactはこの手の面白挙動が結構あるのでやってて楽しい気がしています。詰むとてもつらいけれど。